F I E L D N O T E
釣り人は、いつも水面の下に希望を探しに行くのだ。
フィールドノート
去年の夏の一番すてきな思い出
明日からお盆休み。暑さのほうはひと休みという感じですね。わ
たしは、いつものように、四国に両親がいるので、帰省します。
14日の朝に神戸を出て、明石大橋を通って、淡路島を縦断して、
釣りをしながら、のんびり帰ります。
淡路と四国の豊かな自然の中で、自由に遊べる喜びは、何ものに
も換えがたいものです。特にうれしいのは、ありふれた観光地で
はなく、名もない池や川で、釣りをしたり、きれいな空気を吸っ
たりすることです。
そのひとつの、淡路のダム湖に、最近よく行くのですが、水がき
れいで、静かなフィールドです。人気もあるらしく、若い釣り人
もけっこういるのですが、それでも、神戸の近辺よりは静かで、
美しいところです。真夏の、緑の山を映して、透明に輝く湖面を
眺めながら、ロッドを振っていると、どこか別の世界に行ったよ
うな気がします。遠い昔の、原始時代に帰ったような、人類の
もっとも素朴で、基本的な生活のなかに回帰したような、根源的
な、なつかしさを覚えます。
肝心の魚のほうは、あまりたくさんは釣れませんが、去年は一匹
だけ、30cmくらいのバスを釣りました。透明な湖面の底から、滑
るように浮き上がって来て、水面に浮かんだフライをくわえたそ
の魚は、去年の夏の一番すてきな思い出になりました。
46cm。
2002年の最高記録。
from KOBE 2003.4~

今日の神戸の空は、明るい白い雲に覆われています。
不思議なほど、涼しい朝でした。寝ていて、風邪をひきそうなく
らいでした。
ヨーロッパでは、暑い夏が続いているそうです。スイスのアルプ
スでも、暑さで凍土が溶けたりして、事故が増えているそうで
す。でも、そんなニュースにも、あまり驚かなくなっている自分
がいます。ああ、またか、という感じです。そういう状況が一番
恐いのかもしれません。
今日は、釣りにも行かず、本屋さんにも行かず、一日ゆっくり
と、ホームページの更新をしたり、明日の釣りのためのフライを
巻いたり、帰省のための荷造りをしたりします。
明日行く湖を想い浮かべながら、フライを巻いていると、去年の
魚のあの白い魚体が、記憶の中から浮かびあがってきます。明日
は、どんな魚が、このフライをくわえるだろうと想像します。楽
しいひとときです。やはり、フライフィッシングの楽しさは、自
分で巻いたフライに、魚が反応する、あの瞬間のクライマックス
でしょう。それは、ある意味では、セックスに似ているかもしれ
ません。
今日の神戸の空は、明るい白い雲に覆われています。明日行く湖
は今も、淡路の美しい緑を、湖面に映しているでしょうか。
平荘湖ふたたび
あれは、フライでバスを始めた年のことだった。その頃はまだ、テンカラの仕掛けでバスを釣っていたが、自分でも驚くほど、バスの反応がよかった。ちょうど6月頃までは、渓流に行っていて、テンカラには、ある程度慣れていた。6月からは、鮎のシーズンになって、渓流のあまごも、鮎釣り師に占領されて、ポイントを探すのもむずかしくなる。それなら、一度、テンカラの仕掛けに、バスフライを結んで、試してみるくらいのつもりだった。息子がバスをやっていたので、一緒に行ってみた。そして、その日の第一投目にバスが浮いて来て、
フライにバイトしてから、やめられなくなった。
今から思うと、やはりあの一年目が、一番面白かったと思う。
テンカラの仕掛けは、短いので、当然足下や、護岸の際しか狙えない。しかし、ラインが短いので、比較的正確なコントロールができる。そのためもあってか、おもしろいように、よく釣れた。小野大池のゴミ溜まりや、ストラクチャーの際にフライを落として、少し誘うと、勢いよく水面を割ってバスが、飛び出してきた。よそ見をしている時に、音がして、見てみるともう、魚がフッキングしていたこともある。
しかし、ラインが短すぎて、損をすることもあった。その年の夏、平荘湖に行った時のことだった。比較的大きなワンドがあって、ウィードや岩があるため、ギルやバスの溜まりになっているポイントだった。その中でも、かなり大きい岩の蔭の、水深のあるポイントがあった。見るからに、バスが隠れていそうなポイントだった。そのあたりに、バスバグ系のフライを適当に落としてみた。すると、間もなく、大型のバスが3匹くらい、一度に浮いて来るのが見えた。そして、その中の一匹と、偶然目が会ってしまった。テンカラのラインが短いため、バスとの距離が取れなかったのだ。私は、背を低くしたまま、子供のようにどきどきして、その光景を見ていた。今でも、あの時のバスの、丸い大きな目を覚えているが、その目はあきらかに、びっくりしているように見えた。そして、目があったとたん、バスは3匹とも、すぐにあわてて沈んで行った。
ひょっとすると、この話を信じない人もいるかもしれないが、無理に信じて欲しいとは思わない。ただ、バスのほうが私の目をみたかどうかは別にしても、私がバスの目を見たことだけは、はっきりと断言できる。
どちらにしても、平荘湖は豊かなフィールドだった。豊かで、美しい夢に満ちた、湖だった。もう一度あのフィールドで、自由に釣りのできる日が来ることを祈りたい。




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